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    終末期の母、ホスピスへ転院

    2020年秋からガンの闘病を続けてきた母は、少し前から病院で「緩和ケア」を受けています。

    これまで、ガン闘病当初からお世話になっていた病院に入院していましたが、先日、別の病院の緩和ケア病棟(ホスピス)へ転院しました。

    「ホスピス」という言葉、私は単純に「闘病を終えて、最期の時間を穏やかに過ごす場所」と捉えていましたが、ちょっと違うのですね。

    ホスピスを利用できるのは、苦痛の緩和を必要とするガンまたはエイズの患者さん(情報元)なのだということを、母のホスピスへの転院準備をしていて知りました。

    さて、転院の日の朝、母が入院している病院へ。

    コロナ対応で、今いる病院も転院するホスピスも、付き添いは1人です。

    病院出発の予定事時刻より早めに到着し、退院手続きなどを済ませて待合室で待っていると、

    母がお願いしている福祉タクシーの運転手さんと思われる方が、ストレッチャー(担架)を運び込むのが目に入りました。

    福祉タクシーは、ワゴン車サイズの後方に、ストレッチャーが入るスペースが設けられているタクシーで、患者さんは横たわったまま移動できます。

    母は2022年6月頃から寝たきりなので、自家用車での移動は難しく、福祉タクシーの利用が必須でした。

    手配は病院の医療相談員さんがしてくださり、家族が色々と調べたりする手間もなく、助かりました。

    目の前を通ったストレッチャーは、思った通り母が利用する福祉タクシーのものだったようで、少しするとストレッチャーに仰向けになった母が現れました。

    コロナ第7波のため、面会も(医師の判断で必要な場合に許可されていた)面談も、禁止となっていたため、母と顔を合わせるのは、ちょうど1ヶ月ぶり。(ほぼ毎日、電話で声は聞いていました)

    「また少し痩せたな」というのが、最初の印象でした。

    久しぶりの再会をゆっくりと味わう隙もなく、看護師さんから、母の荷物や、今使っているたくさんの薬の説明を聞きます。転院先のホスピスに伝えなければいけないので、私も間違えないよう、確認しながら説明を受けました。

    お世話になった看護師さんたちにお礼を言い、病院を出発。

    母にとっては、久しぶりのドライブです。

    よく知った道を窓の外に眺めながら、「あっ、新しいお店ができた」「ここのお店は閉めたんだね」などと言って、嬉しそうに、たくさんおしゃべりしていました。

    6月の在宅療養中「特別なところへ行かなくてもいいから、ドライブしたいなぁ」と、窓の外を見ながら言っていたので、ホスピスまでほんの20分ほどですが、ドライブを楽しんでくれて良かった。

    通院している時も、父の運転する車に乗っていましたが、後部座席で、隣に座る私に支えられながら頭を垂れて背中を丸くして痛みに耐えていたので、苦痛でしかなかったはず。

    この日は、出発前に病院で痛み止めも入れてもらっていたので、苦痛なく⋯どころか、ドライブを楽しみながら移動できました。

    途中「なんか、お葬式終えて火葬場に行くときみたい。生前なんとかみたいな」なんてことも言っていましたが 笑

    ホスピスに無事到着。

    病棟は看護師長さんに聞いていた通り、とても静かで落ち着いた雰囲気。一般病棟とは雰囲気が全く違います。

    母も「ここはピーピー言ってない」(=色んな機械音がしない)と、落ち着いた雰囲気を気に入ってくれたようです。

    母、看護師、緩和ケア医の4人での面談や、母をのぞいた3人での面談を終えた後は、しばらく母と2人の時間がありました。

    でも、何を話したというわけでもないんです。

    「傾眠(けいみん)傾向がだいぶ強くなってきている」と病院の看護師さんに聞いていましたが、母は話をしている途中でもスーッと目が閉じて、眠ってしまいます。かと思うとちょっとした音などでまたすぐ目を開ける。

    *「傾眠とは、意識障害のひとつで、声かけや肩をポンッと叩くような軽い刺激で意識を取り戻す状態のこと」(引用元)

    「まだ記憶が新しいうちに書いておこう」と思い、このブログを書いているので、つい最近のことではあるのですが、母と話した内容はほとんど思い出せないのです。

    たぶんそれほど、途切れ途切れな会話だったのだと思います。

    覚えているのは、孫のかわいさ(私の兄の子ども)を話しながらくしゃっと笑顔になって、そのままスーッと目を閉じて眠むってしまったこと。

    「明日も会いたいな」と言ったこと。

    ホスピスは、終末期の患者さんが最期の時間を過ごす場所だからか、一般病院(病棟)に比べると、このコロナ禍でも面会規制は、ゆるいです。

    とは言っても、コロナ前と比べれば厳しい面会規制があり、今の段階で、私たち家族は母に毎日会うことはできません。

    切ないですが、それでもこうして、母と以前より会えるようになって良かった。

    それに、母が楽しみにしていてくれたホスピスへの転院の日を迎えられて、この穏やかな環境に無事に落ち着くことができて良かった。

    転院の日の夜は、身体はものすごく疲れていたけれど、心地よい疲れだったように思います。

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